IC/BPS の治療法
アメリカ泌尿器科学会(AUA)のものを含むほと んどのガイドラインは、医師は 最も低侵襲な方法から始め、より侵襲的な技術へ は段階的に進めるべきだという見 解を共有しています。[1]
ライフスタイル改善と食事
最も侵襲性の低い治療の可能性は、ライフスタイ ルの改善にあります。 食事は症状に大きな影響を与えます。IC/BPS の 飲食物リストはインターネット上で広く公開され ており、[2],[3],[4] このトピックに関する科学論文も発表され ています。[5],[6] 文献のほとんどは、特定の栄養物が損傷し た膀胱壁を刺激することに同意しています。リス トは通常、以下のことに言及しています。
- カフェイン入り飲み物
- アルコール飲料
- 辛いもの、刺激の強い食品
- 炭酸飲料を含む酸味のある食品や酸性の 食品
- 酸度の高い果物
- フレグランスオイル及び/又は揮発性オイル化合物を含有する茶又は特定の栄養補助食品
- ハーブ製品
IC/BPS に適した食事に従うことは、症状を軽減 するのに役立つでしょう。 しかし、特に重症の場合、 生活習慣や食生活の変化だけでは効果があるとは 限りません。通常、効果が現れるまでにはかなり の時間がかかり、このような治療中に症状が悪化 することもあります。
内服
症状の改善が見られない場合、次に主流となる 治療法 は経口治療です。最も一般的な薬は、通常、以下 の有効成分を一つ以上含んでいます。
- 抗ヒスタミン性抗炎症剤
- 非ステロイド性抗炎症剤
- コルチコステロイド系抗炎症剤
- 三環系抗うつ薬
- ガバペンチン神経痛緩和
なお、承認されている製品と入手可能な製品のリ ストは、国によって大きく異なります。
これらの物質の有効性を調べた 研究は数多くあり、多くの文献に もまとめられています。[7] これらの薬剤には、 抗炎症作用、疼痛抑制作用、抗うつ作用があるた め、経口薬による治療 は排尿や痛みの症状を緩和し、患者の生活の質を 向上させる効果的な方法であると考えられていま す。
酸性の尿は膀胱を刺激し、症状を悪化させる恐れ があるため、 尿のアルカリ化は経口治療で重要な項目です。 尿を酸性にする食品群を避けるだけでは、十分な 効果が得られないことが多々あります。 そのため、アルカリ化剤(薬やサプリメント)は 、経口治療においても大きな役割を果たします。
しかし、これらの薬剤は GAG 層の完全性にはほと んど影響を与えません。GAG 層の補充に使用され るひとつ、または複数の有効な医薬成分(後 述)を含む特定の製品があることについて は言及する価値があります。それらの多くは、広 く知られており、インターネット上で入手可能で す。このグループで、最も重要な医薬品は、食品 医薬品局(FDA、米国)によって承認されてい るペントサンポリ硫酸ナトリウム(PPS、エルミロ ン、 SP-54)であり、積極的に GAG 層の補充を助ける唯一 の経口薬であると考えられています。
GAG 層補充剤の使用にかかわらず、経口療法には いくつかの考慮すべき欠点があります。 膀胱に到達するまでに 、薬剤は消化器系で吸収され、循環し 、他の組織にも及びます。このことは、薬の効能 を低下させ、副作用の可能性を高めます。例えば PPS は、GAG 層への効果を得るために 3 か月以上 の服用が必要です。経口で PPS を長期に渡り服 用した場合、重大な副作用が生じる可能性があり ます。[8] この問題に関する最近の発見は特に懸 念されています。[9]
局所治療 (膀胱内注入)
次に挙げられるのは局所治療、膀胱内に特定の物 質を直接注入する方法です。
過去 20 年の間に、多くの有効な薬剤が試されて きました。その中でも、例えば BCG(Bacillus Calmette-Guarin)は効果がないことが判明して います。[10] その他、神経成長因子を阻害する薬 剤は安全性に問題があります。[11] 特定の物質で は部分的に限り進歩が見られます。例えば、バニ ロイドでは痛みは軽減されましたが、排尿症状に 関しては改善が見られませんでした。[12] 現在治 験中の薬剤もいくつかありますが、その結果には まだ議論の余地があるか結論が出ておらず、また 十分な臨床試験がまだ行われていません。P2X3 受容体(膀胱の活動に影響を与える)をブロック することは有望かもしれませんが、さらなる実験 が必要でしょう。[13] ボツリヌス毒素 A(BTX- A、ボトックス)は何度か治験されていますが、 結果は賛否両論あるようです。[14],[15]
リポソームを用いて異なる薬剤を送達することは 効率的な方法ですが、[16] これもさらなる実験が 必要でしょう。有効成分においては、GAG 層の補充に関連した6 つの主要な化合物があります。下記の通りです。
- ペントサンポリ硫酸ナトリウム(PPS、エ ルミロン、SP-54)
- ジメチルスルホキシド(DMSO、Rimso-50/ リムソ-50)
- リドカイン(アルカリ化リドカイン、AL)
- ヘパリン
- ヒアルロン酸(HA)
- コンドロイチン硫酸(CS)
一方で、これらの物質の臨床データには議論の余 地があります。
PPS の構造は GAG 層に自然に存在する化合物と 類似しています。その作用機序はまだわかってい ませんが、効果的な膀胱内治療薬になる可能性が あります。[17]
DMSO は、FDA によって膀胱注入用に承認されてい る唯一の薬剤です。いくつかの論文によると、他 の特定の薬剤よりも効果的とあります が、[18] DMSO に関連する問題点を指摘する文献もありま す。[19]
アルカリ化したリドカイン(AL)は膀胱のカクテ ル療法によく使用されます。いくつかの確かな情 報には、リドカイン自体が GAG 層の補充に有効な 薬とあります。[20] ほとんどの専門医は、たとえ その効果を否定する研究があるとしても、リドカ インは他の化合物の有効性を高めることができる と考えています。[21]
ヘパリン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸は GAG 層の天然成分です。ヘパリンは単独でも他の 化合物との併用でも、局所治療によく使用されて います。[22] ヘパリンは、例えば DMSO よりも効 果が低いというデータもあります(上記参照)。 ヒアルロン酸は最も普及している成分かもしれま せん。その効果は何度か検証されていますが、異 なる結果が得られています。[23],[24],[25] コ ンドロイチン硫酸についても同様で、入手可能な データにはまだ議論の余地があります。[26],[27],[28] いくつかの研究によれば、HA+CS は DMSO と同じくらい効果的と考えられています。[29]
医療現場では、患者が治療に反応することを期待 しながら、医師はそれぞれ配合の違う薬剤を使用 しています。[30]
議論の余地を残すデータの多くは、いくつかの事 実に基づいているかもしれません。第一に、 IC/BPS の病因はまだわかっていません。もしこ の病気がそれぞれ違う理由で発症する可能性があ る場合、異なる病因を持つ患者は治療に対し、異 なる反応を示すかもしれません。第二に、多くの 国では、これらの治療薬のうち一種類だけ、もし くはごく少数しか承認されていないため、客観的 で比較可能な全体像を築く可能性が妨げられてい ます。第三に、ほとんどの国では、膀胱注入に使 用される薬剤、カクテルはごくわずかで、通常は 医師の処方により、十分なサンプルサイズの臨床 試験を実施することが非常に困難なのです。
適切な薬が使用されていれば、局所的な治療は効 果的であるにもかかわらず、経口薬よりも人気が ない理由を検討する価値はあります。侵襲性は重 要な要素です。多くの医師は、やむを得ない場合 を除き、カテーテルの使用を避ける傾向がありま す。患者は痛み、またカテーテルが原因の微小病 変や感染症のリスクを恐れ、膀胱内注入療法を拒 否することが多くあります。これらの問題を克服 するために、Urosystem は UroDapter®と UroStill®を開発しました。前者はカテーテルに 代わる小型の装置です。後者は、女性患者の自己 注入を可能にする装置です。UroStill®を使用す れば、専門医の直接の関与なしに、自宅で膀胱治 療を行うことができます。
複合療法
治療の最初のラインである食 事療法や内服薬などの侵襲性の低い方法が必要で あることは疑う余地がありません。残念なことに 、診断に時間がかかるだけでなく、侵襲性の低い 治療法の効果は 後から現れます。これは、耐え難い痛みと 重度の泌尿器症候群を伴い、生活の質が徐々に損 なわれながら、患者が 1~3 年以上の生活を無駄にしてしまうという状 況につながっています。このような時間を浪費す ればするほど、患者は侵襲性の低い治療ライン に全く反応しなくなる可能性が高まってきます。
当社の推奨事項を以下のフローチャートにまとめ ました。 症状が重い場合は、できるだけ早く改善するよう に、内服治療と膀胱内注入 治療の併用療法から始めることをお勧めします。
フローチャートに見られるように、適用される治 療ラインは GAG 層完全性テストの結果に連動しま す。 生活習慣の改善、食事療法、内服薬が効果的で十 分なのは、軽度の IC/BPS の場合に限られます。 治療の有無にかかわらず、このような場合で も病状の悪化は 否定できないため、経過観察が必要です。(この サイトにはまだ患者フォローアップシステムは導 入されていません。)
より深刻な状態では、膀胱内注入による GAG 層の 補充を直ちに開始しなければなりませんが、通 常、侵襲性の低いあらゆるな方法も 同時に行われます。
神経刺激、GAG 層の損傷部位の高周波療法 、または膀胱摘出術を含む、より侵襲的な治療法 は、他のすべての治療法が効果がない場合にのみ 行われます。鍼治療や高圧酸素療法などの代替療 法は、その費用対効果に問題がある ことを考慮し、ほとんどの場合 補助的な治療法としてのみ推奨されています。
[1] https://www.auanet.org/guidelines/interstitial-cystitis/bladder-pain-syndrome-(2011-amended-2014)
[2] https://docplayer.net/20821777-Eating-with-ic-www-ichelp-org-interstitial-cystitis-association.html
[3] https://www.ic-network.com/bev/
[4] https://ic-diet.com/IC-diet-food-list.html
[5] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17499305/
[6] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22453670/
[7] https://www.ic-network.com/interstitial-cystitis-treatments/oral-medication/
[8] https://www.webmd.com/drugs/2/drug-14053/pentosan-polysulfate-sodium-oral/details
[9] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29801663
[10] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15758738/
[11] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5756823/
[12] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24376550/
[13] https://www.ics.org/2015/abstract/23
[14] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24276074
[15] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25690160/
[16] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4708561/
[17] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5522791/
[18] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28150028
[19] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5293394/
[20] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19021619/
[21] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22576327/
[22] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22082303/
[23] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22576327/
[25] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4708541/
[26] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20494413/
[27] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18778342/
[28] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22516357/
[29] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/27654012/
[30] https://www.ic-network.com/interstitial-cystitis-treatments/bladder-instillations/